Microsoft 365 Copilotは、Microsoft自身ではなく、OpenAIが開発したモデルを使っています。自社のサービスなのに、なぜ他社が作ったモデルを使えるのでしょうか。ここに関わっているのが「API」です。名前は聞いたことがあっても、実際に何をしているものなのか、説明しにくい言葉ではないでしょうか。この記事では、専門知識を前提にせず、APIとは何かを見ていきます。

APIとは何か、プログラム同士をつなぐしくみ

APIとは、あるプログラムが持っている機能を、別のプログラムから呼び出せるようにするための、決められたやり取りの手順のことです。

よく、レストランの注文窓口にたとえられます。客は厨房の中に入って料理を作るのではなく、窓口を通じて「これを作ってください」と伝え、できあがった料理を受け取ります。厨房の中身を知らなくても、注文さえすれば料理が出てくる。この形自体は、APIのイメージに近いものがあります。

ただ、この比喩だけでは、大事な点が伝わりません。APIを使ってやり取りしているのは、人間ではなく、プログラムだという点です。私たちがChatGPTのアプリを開いて質問を打ち込むときは、人間が画面を見ながら文字を打っています。ところがMicrosoft 365 CopilotのようなサービスがOpenAIのモデルを使うときは、そこに人間は立ち会っていません。Microsoftがつくったプログラムが、OpenAIの用意した窓口(API)に向けて自動的に文章を送り、返ってきた答えを受け取って、WordやExcelの画面に表示しているのです。

APIについてはこちらの記事で丁寧に解説しています

モデル開発企業・API・アプリ企業・利用者という四つの立場

ここには、四つの立場が登場します。モデルを開発する会社(OpenAIなど)、そのモデルを外部のプログラムから使えるようにする窓口であるAPI、そのAPIを使って自社のサービスを組み立てるアプリケーション企業(Microsoftなど)、そして、そのサービスを実際に使う私たちです。

モデルを開発する会社は、ChatGPTのような自社の公式アプリを作ると同時に、APIという窓口も用意しています。これによって、他の会社が、同じモデルを土台にして、まったく別のサービスを作れるようになります。

Cursorは、複数社のAPIを組み合わせたアプリ

この「APIの上に別の会社がサービスを建てる」というしくみを、より徹底した形で使っているアプリもあります。プログラミングを助けるCursorというアプリです(まだあまり聞いたことがない、という方も多いかもしれません)。

Cursorは、自分たちだけのモデルに頼るのではなく、OpenAIやAnthropic、GoogleのAPIを通じて、複数の会社のモデルを呼び出せるようにしています。利用者は、コードを書きながら、今日はClaude、明日は別のモデル、というように、使うモデルを画面上で選ぶことができます。Cursor自身はモデルを一から開発しているわけではなく、複数の会社のAPIを組み合わせて、プログラミングに特化した使い勝手をつくっているのです。

アプリ側は文脈・ツール・画面・ワークフローを設計できる

APIを使うと言っても、モデルがそのまま渡されるわけではありません。API経由でモデルを使う会社は、そのモデルに何を伝えるか、モデルにどんな道具を使わせるか、結果をどんな画面で見せるか、作業の流れをどう組み立てるかを、自分たちで設計できます。

Cursorであれば、プログラミング向けに調整した情報の渡し方や、書きかけのコードとの連携、修正案の見せ方を、Cursor自身が設計しています。同じモデルを使っていても、これらの設計次第で、私たちが実際に受け取る体験はサービスごとにまったく違うものになります。これは、同じモデルでも、サービスが変われば体験も変わるという、AIサービス全般に共通する構造です。

ChatGPT.comを直接開いて使うとき、私たちはOpenAI自身が用意した画面と機能を使っています。ところが同じGPTというモデルを、Microsoft 365 CopilotのようなAPI経由のサービスから使うときは、画面も機能も、Microsoftが設計したものになります。同じモデルへの入り口が、公式のウェブ版とAPI経由の版とで、まったく別の顔を見せているのです。

ここで注意しておきたいのは、「同じモデル名を使っているから、同じように使える」とは限らないということです。ChatGPTというOpenAI公式のアプリで使えるモデルと、APIを通じて他社のサービスから使えるモデルは、名前が同じでも、利用条件や周りに用意されている機能が異なることがあります。

APIは、単なる技術的な接続方法ではありません。モデルを開発した会社が、自社の外にどこまで力を貸すかという選択そのものでもあります。「なぜ他社のモデルを使えるのか」という素朴な疑問の先には、そうした会社どうしの関係が広がっているのです。