「AIにおいて、モデルの重みが無料でダウンロードできれば、それはオープンソースだ」

そう思っている人も多いのではないでしょうか。実は、オープンソースとオープンウェイト(重みが公開されていること)は同じ意味ではありません。この記事では、「オープンソース」と「オープンウェイト」という、よく混同される二つの言葉の違いを見ていきます。

OSIのOpen Source AI Definitionが求める、コード・重み・データ情報の公開

「オープンソースAI」という言葉の定義を定めている団体の一つに、Open Source Initiative(OSI)があります。OSIが定める「Open Source AI Definition」は、公開すべき対象として、大きく三つを挙げています。一つは、モデルを訓練し、実行するための完全なソースコード。もう一つは、訓練済みのパラメータ、つまりモデルの重み。そしてもう一つが、訓練に使われたデータについての、十分に詳しい情報(出所、範囲、取得や選別の方法など)です。

多くの人がイメージする「オープンソース」は、このうち重みの公開だけを指していることがほとんどです。しかしOSIの定義では、重みだけを公開しても、オープンソースAIの条件を満たしたことにはなりません。

重みだけが公開されている状態を指す「オープンウェイト」

重みだけが公開されている状態を指す言葉として、「オープンウェイト」という表現が使われます。モデルをダウンロードして使ったり、手を加えたりすることはできますが、そのモデルがどんなデータで、どんな手順で訓練されたのかまでは、必ずしも公開されません。オープンソースとオープンウェイトは、似た言葉のようでいて、公開されている範囲が異なるのです。

Metaの「Llama」、企業の主張とOSIの判断のズレ

企業が「オープンソース」と呼んでいるモデルが、OSIの定義に当てはまるとは限りません。MetaのLlamaは、企業自身が「オープンソース」を掲げているモデルの代表例ですが、OSIは、Llamaのライセンスについて、あらゆる目的での利用を認めていないこと、特定のユーザーを差別的に扱っていること(たとえば新しいバージョンでのEU域内ユーザーの除外)、特定の分野での利用を制限していることを理由に、Open Source Definitionの条件を満たしていないと結論づけています。企業自身の「オープンソース」という説明は、あくまで企業による主張であり、第三者による判定とは別物だということが分かります。

DeepSeekは、重みの利用は自由でも訓練の中身までは公開していない

一方、DeepSeekが公開しているモデルの重みは、MITライセンスという、商用利用も含めてほとんど制限のない、自由なライセンスのもとで提供されています。この点では、Llamaよりもずっと制限が少ないと言えます。ただし、DeepSeekも、モデルを訓練するために使った完全なコードや、訓練データそのものまでは公開していません。重みの利用条件が自由であることと、OSIが定めるオープンソースAIの条件を満たすことは、別の話なのです。

こうして見ていくと、「オープンソースか、そうでないか」を単純な二択で判断することは難しいと分かります。ソースコード、モデルの重み、学習データに関する情報、そしてライセンスの内容。それぞれが、どこまで公開されているか、どんな条件のもとで使えるかを、個別に確認する必要があります。企業が「オープンソース」と名乗っているかどうかよりも、実際に何が、どんな条件で公開されているかを見るほうが、実態に近づけます。

参考資料